【インデックス】Morningstar配当利回りフォーカス指数とは
Morningstar配当利回りフォーカス指数とはMorningstar Indexesが算出する株価指数の一種です。本記事ではその銘柄選定基準を解説し、この指数と連動するETF等を購入するべきかどうかを考えたいと思います。
目次
- Morningstar配当利回りフォーカス指数とは何か
- 銘柄選定基準概略
- Morningstar米国株式指数とは
- Morningstarエコノミック・モート・レーティングとは
- 倒産距離とは
- 平均的な利回り
- ETF等を買うべきか
Morningstar配当利回りフォーカス指数とは何か
Morningstar配当利回りフォーカス指数とは、米国企業であるMorningstarグループのMorningstar Indexesが算出している株価指数です。この指数は配当利回りが魅力的で財務の質が高い米国株式のパフォーマンスを追跡することを目的としています。支払配当金額が多い企業ほど高い割合で組み入れられるようになっています。見直しは四半期に1回(3,6,9,12月)行われるようです。
銘柄選定基準概略
親指数
Morningstar配当利回りフォーカス指数の構成銘柄はMorningstar米国株式指数の構成銘柄の中から選ばれます。
スクリーニング
以下の基準によって親指数の中から構成銘柄の候補が挙げられます。
- Morningstarエコノミック・モート・レーティングが付与されている場合、「Narrow」もしくは「Wide」でなければならない
- Morningstar不確実性レーティングが「非常に高い」あるいは「極端に高い」の企業は除外
- Morningstarが算出する倒産距離スコアがセクター分類において上位50%である(上の2つが付与されていない場合は上位30%でなければならない)
不確実性レーティングについて調べた結果、定量的な基準は明言されていませんでした。おそらく、経営状況等が不安定である企業は指数に組み入れられないようにしているのだと思われます。
最終的な決定
以上の条件を満たす企業の中から、予想配当利回りが高い順に75銘柄が選ばれます。しかし、既存銘柄は以下の条件を満たす場合、上の条件を満たさなくてもそのまま構成銘柄に採用されます。
- 予想配当利回りが上位75位内
- 予想配当利回りが上位100位内かつ前回の指数再構築時に上位75位内であった
単一構成銘柄の割合は10%以下になるように設計されます。また、構成銘柄比率が5%を超える銘柄の合計が50%以下に抑えられるようです。
Morningstar米国株式指数とは
Morningstar米国株式指数とは米国株式市場の時価総額上位97%を占めることを目指す株式指数です。構成銘柄はニューヨーク証券取引所、ナスダック、NYSE Market LLCのいずれかで取引されている普通株、REIT、トラッキングストック(特定の事業部門の業績にリンクした株式)の中から選ばれます。また、主に米国で活動し、米国、グアム、プエルトリコ、米領バージン諸島のいずれかで設立されている企業の銘柄でないと構成銘柄として採用されません。毎年6月と12月に銘柄の再編成、3月と9月に銘柄の割合の調整が行われます。詳細な銘柄選定基準は以下の通りです。
投資可能ユニバース
前四半期に10日以上取引がなかった株式は構成銘柄の候補から除外されます。その後残った銘柄を投資可能ユニバースと呼びます。
スクリーニング
以下の条件を満たす銘柄の浮動株時価総額加重で指数は算出されます。
時価総額
時価総額が投資可能ユニバースの上位97.25%に入っていなければなりません。
流動性
以下の平均順位が投資可能ユニバースの上位75%に入っていなければなりません。
- 直近6暦月間の月刊平均取引量(6ヶ月未満の法人は証券が最初に発行されてからのデータを用いる。1ヶ月未満の期間はその月の取引日数で按分する。)
- 直近暦月間における取引量が最も少なかった2ヶ月の合計取引量(月は連続している必要はない)
Morningstarエコノミック・モート・レーティングとは
Morningstarエコノミック・モート・レーティングとは、超過利益から今後その企業がどれだけ安定した業績を上げ続けることができるかを予測したものです。超過利益はROICからWACCを引いた値で算出するようです。
WACCとは
WACCとは加重平均資本コストのことで、借入にかかるコストと株式調達にかかるコストを加重平均することによって求めることができます。借入にかかるコストとは主に利息のことで、株式調達にかかるコストとは期待利回りや配当のことです。企業は株主の期待に応えるだけの利益を得て株価や配当に還元しないといけないため、期待される利回りや配当額がコストというふうに考えることができるわけです。株式調達にかかるコストは主にCAMPというモデルによって算出されるようですが、具体的な説明をここでは割愛させていただきます。WACCの計算式は以下の通りです。
\( \frac { 有利子負債 } { 有利子負債 + 時価総額 } × 平均負債コスト × (1 - 法人税割合) + \frac { 時価総額 } { 有利子負債 + 時価総額 } × 株式資本コスト \)
ROICとは
ROICとは投下資本利益率のことで、投下した資本(有利子負債、株主資本)に対してどれくらい利益を出すことができたかを表す指標です。計算式は以下の通りになります。
\( \frac { 税引後営業利益 } { 有利子負債 + 株主資本 } \)
ROICが高いほど、効率よくお金を稼ぐことができていると考えることができます。
WACCとROICをチェックすることで、企業が支払わなければならないコストとどの程度効率的に稼げているかを見ているようです。Morningstarはエコノミック・モート・レーティングが「Narrow」と評価された企業は今後10年間、「Wide」と評価された企業は今後20年間にわたって安定した超過利益が望めると考えるそうです。
倒産距離とは
厳密に倒産距離について説明するには難解な数式を使わなければならないようですが、ここでは簡単に説明します。どうやら倒産距離は総資産と無リスク金利が大きくなるほど長くなり、1年間の予想配当金と直近で支払わなければならない債務が大きくなるほど短くなるようです。無リスク金利とは理論上リスクがないとされる金利のことで、企業が持つ銀行預金や10年国債の金利のことを言います。つまり、今持っているお金と今後確実に入ってくるお金、今後支払わなければいけないお金の量からその企業が倒産するリスクを計っているわけです。
平均的な利回り
Morningstar配当利回りフォーカス指数の2013年から2023年までの平均年利は約7%でした。各年の利回りは以下の通りです。
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
年間利回り(%) | 12.80 | -0.16 | 15.91 | 13.45 | -2.85 | 20.41 | -6.40 | 19.47 | 7.16 | 1.87 |
ETF等を買うべきか
配当金はもらえない?
Morningstar配当利回りフォーカス指数はトータルリターン方式で算出されます。つまり、組入銘柄から得られた配当金は再投資に回されるということです。この性質上、高額な分配金が支払われることは期待できないでしょう。実際、SBI証券で売られている、この指数と連動するETFの分配金利回りは約1%程度です。
利回りはS&P500の方が良い
S&P500の2014年から2023年の平均年利は約15%でした。各年の利回りを以下に示します。
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
年間利回り(%) | 13.69 | 1.38 | 11.96 | 21.83 | -4.38 | 31.49 | 18.40 | 28.71 | -18.11 | 26.29 |
リターンが大きい分、リスクも大きいようです。安定した利回りを目指すならMorningstar配当利回りフォーカス指数、よりハイリターンを目指すならS&P500と言えそうです。
財務・業績の評価が難解
Morningstar配当利回りフォーカス指数にはエコノミック・モート・レーティングや倒産距離といった、組み入れ企業の財務条件を設けています。しかし、これらは我々のような素人が理解するには少し難解すぎるように感じます。一方、S&P500の場合は直近四半期の利益が黒字かどうかなど、我々にも理解しやすい定量的な条件を設けています。どのように銘柄が選定されているかを理解して投資をしたいという方にとってはS&P500に連動する商品の方が良いと思います。