関数の極限が存在しないことを示す方法
本記事では関数の極限が存在したいことを示す方法を1つ解説します。まずは2つの補題を証明して、それらを用いて関数に極限が存在しないことを示したいと思います。
目次
- 補題1
- 補題1の証明
- 補題2
- 補題2の証明
- 例題
- 例題の解答
補題1
\( \displaystyle \lim_{x \to a} f(x) = \alpha \)
が成り立つとする。このとき、
\( x_n \longrightarrow a (n \rightarrow \infty) \)
となる任意の数列に対して
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} f(x_n) = \alpha \)
が成り立つ。
補題1の証明
仮定より
\( \forall \varepsilon > 0, \exists \delta > 0 s.t. \displaystyle\left| x - a \right| < \delta \Longrightarrow \displaystyle\left| f(x) - \alpha \right| < \varepsilon \)
が成り立つ。また、
\( \forall \varepsilon_n > 0, \exists N \in \mathbb{N} s.t. n > N \Longrightarrow \displaystyle\left| x_n - a \right| < \varepsilon_n \)
も成り立つ。ここで、\( \displaystyle\left| x_n - a \right| < \delta \) を満たすようなNを1つとる。このNに対して、
\( n > N \Longrightarrow \displaystyle\left| x_n - a \right| < \delta \Longrightarrow \displaystyle\left| f(x_n) - \alpha \right| < \varepsilon \)
が成り立つ。
補題2
数列\( \displaystyle \left\{ a_n \right\} \)に対して
\( \displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha \)
ならば、\( \displaystyle \left\{ a_n \right\} \)の任意の部分列\( \displaystyle \left\{ a_{i_n} \right\} \)に対しても
\( \displaystyle \lim_{i_n \to \infty} a_{i_n} = \alpha \)
が成り立つ。
補題2の証明
仮定より、
\( \forall \varepsilon > 0, \exists N \in \mathbb{N} s.t. n > N \Longrightarrow \displaystyle\left| a_n - \alpha \right| < \varepsilon \)
となるようなNが存在する。このNに対して、N > \( i_{N'} \) をみたすN'を1つとる。このとき、
\( n > N' \Longrightarrow i_n > i_{N'} > N \Longrightarrow \displaystyle\left| a_{i_n} - \alpha \right| < \varepsilon \)
が成り立つ。よって部分列 \( \displaystyle\left\{ a_{i_n} \right\} \)もαに収束する。
例題
\( \displaystyle \lim_{x \to 0} \sin \frac{ 1 }{ x } \)
は存在しないことを示せ。
例題の解答
例題の極限が存在するならば、
\( x_n \longrightarrow 0 (n \rightarrow \infty) \)
となる \( \displaystyle\left\{ x_n \right\} \) に対して、
\( \sin \frac{ 1 }{ x_n } \)
の極限も存在することになる(補題1)。ここでは
\( x_n = \frac{ 1 }{ \frac{ \pi }{ 2 } + n\pi} \)
とする。\( \displaystyle\left\{ x_n \right\} \) の項のうち、n = 2k (k \( \in \mathbb{N}) \) のものを\( e_k \)、n = 2k - 1のものを \( o_k \) とすると、\( \displaystyle\left\{ e_k \right\} \) 、\( \displaystyle\left\{ o_k \right\} \) はいずれも\( \displaystyle\left\{ x_n \right\} \) の部分列となる。このとき、
\( \displaystyle \lim_{k \to \infty} \sin \frac{ 1 }{ e_k } = 1 \)
\( \displaystyle \lim_{k \to \infty} \sin \frac{ 1 }{ o_k } = -1 \)
が成り立つ。これは、\( \sin \frac{ 1 }{ x_n } \)に極限が存在することと矛盾する。よって、\( \displaystyle \lim_{x \to 0} \sin \frac{ 1 }{ x } \)は存在しない。